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思い出の中に魂のかけらが・・・

          笑っていいやら、わからないけれど・・・・

  その昔、生活に苦悩する世帯が国民の七割にも及ぶ終戦後の時代下、

子供の目線から親の苦悩を見ていた坊やが一人。

  その日の夕方、母親が家に戻る前、留守をしていた五歳になる坊やが、

お腹が空いてたまらず、戸棚にあるお砂糖をぺろりと舐めた。

  母親の帰宅に坊やの心に一瞬、緊張が走った。砂糖を舐めた事がばれ

れば、大変なお仕置きされるからだ。

  母 親 「だめ男ちゃん、いい子でお留守番していてくれたのね。」

  だめ男 「うん、僕いい子でお留守番、お砂糖なんか舐めてないよ」

  母 親 「えっ、今、何と言ったの?」

  だめ男 「うん、だからいい子で留守番していたって・・・・」

  母 親 「そうならいいけれどね。ところで、お口の周りに何かついてるわよ」 

  だめ男 「えっ、あれ?蟻さんと遊んでいたら、口の周りで運動会してたよ」

  母 親 「何かついているわよ。」

  だめ男 「うん、蟻さんが置いていってくれたんだよ。」

  母 親 「おや、随分と親切な蟻さんだね。」

  だめ男 「だから、僕、蟻さんに『ありがとう』と言ったよ」

  母 親 「そう、えらいわね!あら!買ったばかりのお砂糖がこれしかないわ」

  だめ男 「うん、蟻さんがとってもおいしいと言って食べていったよ。」

  母 親 「やっとの思いで買ったお砂糖を、もうどうしよう!」

  だめ男 「えーとね、ついでにご飯もないよ。」

  母 親 「やだ、お父さんが帰ってきたら、夕食どうしましょう。」

  そんな母親の様子を見ていただめ男は、自分の宝箱と兄のいい男の貯金箱

から五円玉を二つ取り出し、握って母親の傍にもどり

  だめ男 「僕ね、僕の宝を上げるから、これでお父さんの夕食つくって!」

  母 親 「いいんだよ、あんたにそんな心配かけて・・・・・・」

  だめ男 「お兄ちゃんも貯金箱からくれたから・・・・・」

  母 親 「あら、お兄ちゃんは、まだ学校から帰ってきていないのに!」

  だめ男 「でも、お兄ちゃんが、お腹空いて帰ってきたら、『ご飯』っていつも」

  母 親 「そうだね。だめ男ちゃんの心をお母さん、ちゃんともらったからね。

       ありがとう。」

  だめ男 「僕ね、お腹空いてないよ。」(お腹で「グー」と音が・・・・・・)

  母 親 「今、お母さん、何か、考えるからね!」

  だめ男 「本当だよ、僕、お腹空いてないってば!」

  母 親 「おいで、久しぶりにお母さんのお乳を飲むかい?」

       (その実、もう出ない母乳だった。)

  だめ男 「本当に!いいのか!」

  母 親 「いいのよ。」

  だめ男は、母親の乳首を吸いながら眠りについた。そして、一滴、

母親の瞳から、だめ男の頬を濡らすものが落ちた。 

by warau_1 | 2006-02-26 12:17 | 笑う門には福が来る