人気ブログランキング |

蛸ボーズ

            痴呆症の母が生前語ったエピソード

私  「私だよ、おっ母さん、判るでしょ!」
母  「そら、判るよ、自分の腹を痛めた子だもの。で、あんたは誰ですか?」
私  「息子の太郎だよ!」
母  「ああ、太郎ね、生きていたかね。確か二十年前に葬式上げたのに生き返ったのかね」
私  「母さん、そりゃ、おじいちゃんのことじゃないの?」
母  「いやいや、おじいちゃんは、ちゃんと生きているよ。そこにいるじゃないの。それよりね、先日、小泉総理大臣が近くまで来てね、おしっこしりたいので、トイレを貸して欲しいと言うか 
ら貸してあげたよ。」
私  「そう、良かったね。」(医師からも否定すると益々痴呆が進むので否定しないように指導 されていたので・・全て母の話しは、実在の話しとして受け止めている様子を示す事にしていた。)
母  「それでね、総理大臣がお腹が空いたから食事もしたいと言うのでお昼ご飯も差し上げた
    のよ。」
私  「それは、とてもよい事したね。今度は、首相官邸に招かれるかもしれないね。」
母  「やだね、母をからかうものじゃないよ。」
私  「ところで、親父さんは、何処にいるの?」
母  「それがね、最近、女の所に遊びにばかりいっているのだよ。」
父  「おれは、ここに居るよ」(台所から話し声を聞きつけて応接間に入ってきた父)
母  「お宅様、どなたでございましょうか?」(父に向かって言った)
父  「おいおい、六十年も連れ添った俺だよ、判るだろう?」
母  「やだよ、こんな蛸坊主に私は知り合いはいないよ。」(剥げた父の頭を指差しながら)
父  「蛸坊主か、あんまりはっきり言わないで欲しいな。」
    そんな父をじっと見詰めながら・・・・
母  「やだよ、お父さん、何時帰って来たのよ。壁から出て来たの?」
私  「親父さんは、台所から来たんだよ。」
父  「そうとも、太郎が来るのでご飯を炊いていたのだよ。」
母  「あらあら、男が台所にたったのかい。いやだね。私の若いころは、男を台所に立たせた    ら、嫁の恥だったものだよ。お宅様はどちらのご亭主さまですか、お嫁さんの顔が見た
   いものですわ。」
父  「俺は、お前の亭主だよ。忘れちまったのかい?」
私  「おっかさん、親父さんは、どこにもいかないよ。ここに居るのだから」
母  「あら、ここにあなた何時から居るの?・・・・・」
    私は、父の瞳にうっすら浮かぶ光るものを見逃さなかった。そこに、実兄(六十歳)が出先
   から帰宅。兄も遺伝なのか頭髪が薄い。
母  「いやですね、この家は、お宅様、どちら様かわかりませんが、早くここを立ち去った方が   よろしゅうございますわよ。何しろ、この家には、蛸坊主が二つもいるからね。ああ、やだや
   だ」と私に内緒話し口調で語りかけた。
兄  「いいよ、坊主で、坊主丸儲けになればね・・・・・・・・」やけ気味に私に兄が言った。#IMAGE|b0047225_7483286.jpg|200503/13/25/|mid|120|120#] 

by warau_1 | 2005-03-13 07:49 | 恋人とエピソード