ああーあ、スカートにべっとり・・・・

 あ り し 日 の 走 馬 灯

  移り変わる世間には、人それぞれに数々の課題・難題・問題数あれど、

生ある故の悩みなり。

  故人の妻を偲ぶ三回忌、世間相場じゃ、亭主・親族勢ぞろい、読教

耳にしつつ、ご焼香は、世の常なるを知りつつも、墓の場所・寺の名前・

三回忌の日程すらもツンボさじきとなりにけり。

  思えば、初デート、彼女の誕生日にも関わらずデートの最後にポロリ

こぼれた一言に、分かれられず最寄喫茶に飛び込みて

 私 「早速、誕生祝いをささやかにやってあげたい」と告げ、彼女に

オーダー促して、黙って様子を見てたら

 彼女「あの、ショートケーキとポタージュスープ」とのオーダー。

  心じゃ笑い抑えつけながらオーダーそのまま店員に告げたっけ。

 オーダー品がテーブルに並べられるや彼女の手のスプーンがショート

ケーキに取り組んでまもなく、スプーンが頭上高く舞い上がり、彼女の

スカートの上に落下。

  彼女「あーあ、汚れちゃった」との一言ありき。

  「スプーンで切れないほどのショートケーキってあるのだろうか?」

そんな思いを抱きながら「大丈夫ですか?」と彼女の顔を覗き込むと、

今にも泣きそうな顔しながら、スカートに付着した生クリームを丁寧に

ティッシュで拭き取っていた。まるで、ご飯粒をこぼして叱られ、拭い

ている幼稚園生の様に・・・・・・(決めた、この人と結婚しよう。)。

  無償に彼女の母親の姿を見てみたくなり、ポタージュスープが無

くなった時点を見計らい告げた。

私 「あのー、今日は、間もなくお別れになるけれど、お宅まで見送ら

   せてください。そして、もし、できればお母様を紹介してね。」

彼女「でも、突然ですから・・・・いいです。」

私 「分かった。じゃ、これからお母様に電話して、お伺いしようね。」

彼女「でも・・・・」

私 「さっ、電話して・・・・ね。」そして、彼女が電話するのを待った。

彼女「もしもし、お母さん!間もなく帰ります。」時、すでに夕方六時。

  その年の10月25日の日曜日は、晴れ。だが、肌寒い。街の

ネオンも煌々と行き交う車を浮かびあがらせていた。

彼女「それでね、彼がお見送りして、お母さんをも紹介してって」

義母「そんな、初デートなのに、丁寧にお断りしてよ、お化粧もして

   いないわよ。」

  受話器を通して聞こえる義母の声に、「電話代わって!」と彼女

にサインを送り、ようやく交代。

私 「お母様ですか、初めまして。これから大切なお嬢様をお見送

   り致しますので、ご挨拶だけでもお会いできればと思います。」

義母「そんな、ふつつかな娘ですが、一人で帰れますので御気使い

   なさらないで下さいませ。」

私 「いえ、とにかくお送りいたしますのでよろしくお願いします。」

  と電話をこちらから一方的に切り、一路、彼女の実家へ。

義母「わざわざ、お見送りなど、申し訳ありませんでした。さあ、お上

   がりください。」

私 「いえ、ご挨拶ということでお伺いしただけですから・・・・・」

義母「いえ、もう準備もしてございますので・・・・・」

私 「唐突な訪問で失礼と存じましたが、どうしても『お母様』にお会

  い致したくて・・・・・・分かりました。では、五分だけ・・・」

義母「さ、奥へお上がりください。」

私 「いいえ、この玄関で結構です。お茶だけ頂きます。」

  そして、初デートの様子を手短に話し、五分経過。

私 「ありがとうございました。お茶ご馳走様。五分経ちましたので

   ここで失礼致します。」

義母「えっ、だって、お寿司も用意していますのに・・・・・・」

私 「いえ、五分経ちましたので失礼します。」

  台風のごとく、彼女ら母子を襲った一幕。その彼女との結婚生活

二十年を経て、ガンで他界した骸の唇にそっと、ずっと唇を寄せた私。

夫婦でなければ、できない永遠のルージュに心は、通っていた。

  そして、今、彼女の遺影を大きな額に収め、限りなく天井に近い

場所に飾ってある。

  不思議な事に額に収めた遺影を飾り終えた瞬間、部屋中に光が

走った。きっと、彼女に伝わったのだろう。

  まさに彼女は「てんじよう人」だから・・・・・・! 

 
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by warau_1 | 2006-05-03 09:51 | 恋人とエピソード