疑う心に幸宿らず

     「知らぬが仏」の挙句の果てに

 人恋うる心、誰しも抱くものなれど、一歩間違えれば、奈落の底

に導かれしものと心して、声を掛けたる若者一人。

 もしも良ければお付き合いいたしたいと願えども、簡単に受けたる

女性に警戒心が生まれるのも仕方無き事か。

 万一、彼女が付き合う相手となったとて、自分のいない街角で

美男に声かけられれば、素直に付いてくタイプと思い込む。

 自分が街角で声かけた事も棚に上げ、彼女を疑惑の眼差しで

見るゆえに、彼女も同じ思いを抱く。

 二人の距離が接近すればするほど、独占欲が互いに募り、出会い

の声掛け合ったその時が、脳裏を掠める日々続く。

 彼女は彼女で彼が一人で街行けば、幾多の女性に声かけて、

同じように軟派して、くどくのではなかろうかと危惧やまず。

 互いに思う心が、高まれば高まるほど独占欲も互いに深まり、

拘束しあうは、天の計らいか。

 彼女「ねえ、私をゲットしたと同じ方法で他の女性もくどくのでしょう?」

 彼氏「おれは、そんな起用な男じゃないよ。」

 彼女「うそ、ちゃんと知っているのですからね。」

 彼氏「何を知っているのさ。」

 彼女「先日、グリーンのベレーボーを被った小柄な女の子に声

    かけたでしょう。」

 彼氏「えっ!あれは、渋谷駅付近だったかな!」

 彼女「そうよ。渋谷駅前の忠犬八公の銅像の前よ。」

 彼氏「なんで、君がそんなこと知っているの?」

 彼女「だって、あの彼女は、私の友人なのよ。」

 彼氏「ならば、事の流れは、良くわかるでしょ。」

 彼女「そりゃ、解かるけれどね。あなた、相当しつこく口説いたでしょ」

 彼氏「君を口説いた時の様にさほどしつこくなかったと思うよ。」

 彼女「口説いたのね、当然、断られたのでしょ。」

 彼氏「まあな、・・・・・・・」

 彼女「だって、あの人は、私の中学時代のクラスメートよ。」

 彼氏「そうか、それであの時の事を良く知っているのだね。」

 彼女「こんどあんなことしたら絶交だからね。」

 彼氏「もうしないよ。だから・・・・・・ね・・・・・!」

 彼女「いやよ、もう・・・うん・・・・!」

 若い二人は、これまで以上に接近した。いつまでもいつまでも。
 
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by warau_1 | 2006-06-09 00:16 | 恋人とエピソード