最後の果実➡第4話 愛の蹉跌-8
工藤記者からの情報は、想像を遥に超えた内容であった。つまり、彼らの裏で
糸を引いているのが中国政府のみならずロシアや北朝鮮も含まれている事が裏付け
られて来ている事であった。つまり、日本本土を食い千切る腹である事を工藤は、
指摘していた。
「本間さん、これは、放置しておけない事態ですよね。」
「正に工藤さんのご指摘の通りですね。これを制御するには、どうしても法律改正
と防衛省、環境庁、国土交通省、林野庁、外務省、官邸等が一体となって、手を打たな
ければなりませんね。」
「この種の内容の場合には、一体全体何処が窓口になるのでしょうかね。」
「やはり、官邸でしょうね。」
「また、国有地の買収が済めば、民有地に必ず手を出しますよね。」
「実は、民有地や民間マンション、公団物件等にも触手を既に伸ばしていますよ。」
「えっ!それでは、既に民間保有マンションや公団も進行中なのですか?」
「数値は、今、存じ上げていませんが、数年前から申請が多くなり、実績も出ている
事は、多少知ってはいます。何しろ国有地に対する管理の立場である為に民間部門に
ついては、目が行き届いていないのが実態です。」と私も工藤記者の危惧に同感だった。
どうやら日本列島と言う日本国の解体計画に類する共産国勢力が秘密裏に暗躍して
来ている様にも感じられた。それは、日本国内経済がデフレから脱却できずに今日に
至り少子高齢化が加速している事もあり、日本人の人数が激減したところで、一気に
政権移譲を迫る意向の様にも感じられる。
だが、日米安全保障条約がある限り表面的に手を出し難いために不動産取得に目を
付けたとみるべきであろう。
その翌日の午後四時頃に恭子に内線電話で課長の在室を確認し、工藤記者からの指摘
や懸念・危惧を報告しに課長室に行った。
するとそこには、官邸の調査主任 島谷悠太氏が課長を訪れていた。私は、勝手に
入るわけにもいかず恭子に課長に繋いでもらった。
「本間君、入り給え、何か報告があるのでしょ」
「はい、有難う御座います。しかし、ご来客中との本田さんから伺いましたので。」
「うん、いいんだよ。官邸の島谷君だからさ。」と課長は、私を室内に促した。そして、
指定されたソファの端に私が座るなり課長は、私に向けて
「で、本間君、何か急ぎの話しがあるのではないのかね!」と畳みかけて質問した。
「はい、急ぎか否かは、何とも言い難いのですが、私の情報ルートからは、とんでも
ない懸念や危惧の話しが飛び込んできたものですから・・・・」
「本間君、構わないから言って下さい。」と課長は、前のめりに私を見て言った。
「実は、海外からの日本の物件購入を加速している組織があり、どうやらそのバック
には、複数の国が暗躍している可能性があるとの指摘なのです。よって、早々に法改正
に着手しなければならないかも知れない。と言う内容です。」
「なるほどね。」と島谷主任も考え込みながら
「しかし、日本は、日米安全保障条約により、第三国が迂闊に手を出せないとおもうが」
「はい、その通りです。だからこそ、日本の不動産取得に目をつけたとの見方ができます。」
私は、工藤記者が素直に危惧している内容を静かに解説した。
「つまり、日本国土に対する所有権を大方取得してしまい、少子高齢化が加速する日本に
第三国の国民が移住する事、さらに選挙権も取得して、合法的に占有する事を視野に活動
して来ていると言う事なのだね。」と課長は、唸り声をあげながら天井を見上げた。
「その第三国とは、如何なる国なのか見定めは、ついていますか?」島谷氏が私に質問。
「はい、情報ルートによれば、共産国で中国・ロシア・北朝鮮と言う国々が上がっている
模様です。」
「しかし、北朝鮮は、拉致問題もあり日本との国交が回復していないですからね。」と
島谷調査主任は、素朴な疑問として私にぶつけて来た。
「はい、その通りですが代理買収と言う手段もあり、決して気を緩める事は危険である
との指摘もありますからね。」
すると課長は、じっと寡黙に話しを聴いていたが、急に席を立ちながら
「島谷君、これから官邸に行き、官房長官とこのテーマで協議しましょう。」と言うなり
「本田君、これから官邸に向かいますので、時間が来たらお帰えり下さい。」と恭子に
告げた。恭子は、話の内容が見えないだけに「はい」と答えるだけだった。そして、部屋を
最後に出る私に恭子は、そっとメモを私の手に握らせた。
私の手は、いつしか汗ばんでいた為にそのメモは、ノートの切れ端であり少し湿気気味
であったがポケットにねじ込んだ。
私達三名が官邸応接に通されたのは、午後5時過ぎだった。六人座れる応接セットは、
豪華な雰囲気のものであり、私が座った事も無い様なものであった。水落官房長官は、少し
時間をおいてから入って来た。